ぜんぶ

ぜんせいぶつの文章

アメリカのクソガキ高校生になってエモくなれるゲーム『Mixtape』はバカみたいな高評価のわりにはそこそこ

『Mixtape』というゲームをプレイした。のんびりやって4時間くらい?すごく短いゲームなので、遊びやすいと思う。2000円くらいだし。レビューサイトとかだとバカみたいに評価が高かったりしたので、さっさと遊んでおくことに。

アメリカの郊外に住む仲良しクソガキ3人衆は、高校を卒業して青春最後ぶちかましていこか!って感じでいる。そのうちの1人、音楽大好き女が主人公で、なんとまあそいつは夢を追うために明日ニューヨークへ発ってしまうのだと。3人でつるんでいられるのも今日が最後。そんな特別な日のために彼女が用意した最強のプレイリスト(つまりミックステープ)で音楽を流しながら、スケボーで車道をかっ飛ばしたり、どうにかして酒を手に入れようとしたり、思い出に浸ったりする。

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クソガキ3人 真ん中のヘッドホンしてるやつが主人公

とは言っても、ゲームの半分くらいは映像を見るばっかりで、その合間にはさまるちょっとしたミニゲームを操作していって物語を進めていく、といった感じのゲーム。

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例えばカセットテープを巻き戻すとか、そういう小さいものから、

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校長の家にしょーもないイタズラを仕掛けたりまで、まあどれもシンプルな操作でできるので、ゲームが下手な人でも問題なくプレイできる。噂だとまったく操作しなくても大半の部分で問題なく話が進むらしいが、まあやるなら操作しといたほうが得。没入感ってやつ?
そういう操作場面では、ときおり現実じゃありえないような、草原を風に乗って異常に飛翔したりするようなこともあり、マジックリアリズムっつーの?ゲームだと自然にそういう演出が組み込めて、気の利いた仕掛けによって派手でエモい体験ができるってわけ。

そういうシーンをよりエモーショナルにするのが、主人公が作ったミックステープによって次から次へとかかる往年の名曲たちなのだけれど、私にとってはよく知らないアーティストのよく知らない音楽が多かったので、ふーん、っていう感じだった。ジェームズ・ガンの映画でやられる音楽イキりみたいなのがずっと続く感じ。まあ音楽でイキってる主人公が作ったミックステープだから、それでいいんだけどね。

でもここでちょっと切ないのが、ミックステープとか言っているのにその媒体はCDだったりすること。舞台が90年代ということもあり、時代が移り変わろうとしている描写として、テープよりもたくさん音楽が詰め込めるCDでリッチなミックステープを作ったよ、みたいなセリフがゲームの冒頭で主人公から語られる。そのCDは主人公が肌身離さず身につけているCD再生用ウォークマンで再生されるんだけれど、カセットテープでエモ稼ぐのはもう散々やったから、CDっしょ!みたいな安直さも感じる。でもCDが今そんなエモいアイテムかは、謎。DVDもエモいって話もあるし、エモいか。

音楽の保存方法がアナログからデジタルに移行しているって意味では、かなり重要な変化なのだと私は思うのだけれど、そこに何か意味づけがあったりするわけじゃなくて、90年代の最先端なおしゃれテクノロジー扱いで、あっそうって感じ。
そもそもレコードやカセットテープが注目された2010年代って、人類がiPhoneとか使ってmp3で音楽聴きまくってたからで、アナログとデジタルっていう対比が強く働いていたけどさ、CDだってmp3じゃないけれど、結局ゼロイチの保存なわけじゃん。サンプリングレートが44.1kHzでビットレート16bitなわけじゃん。よく見るとギザギザな波形なわけじゃん。ギザギザって高音成分だから、デジタルにした時に人間に聴こえる高音成分をフィルタリングしてんじゃん。技術すげー。

みたいなウザいことは気にしないゲームなんだよね、これ。
でも、アナログとデジタルって対立は、こういう根本的な違いを感覚的に気にしていたんだと思うんだよね。どっちの音がいいとか悪いとかって話じゃなく。
私は3000円のワイヤレスイヤホンで満足できる終わってる耳をしているので、音がいいとか、よく知らんが。

でね、物語としては、なんか途中で喧嘩して、仲直りして、ニューヨーク頑張ってね!終わり。みたいな、ひねりも何もねーやつで、びっくり。90年代のクソガキ3人の物語が、今の私たちに何か関係しているようにも思えず。ありきたりな青春映画みたいなことをそのままやること自体がエモいでしょ、って作りになっていて、あまりいいとは思えなかった。

とはいえ、ゲームならではの仕掛けで、「あ、眩しすぎて、切ない・・・」って思える部分はいくつかあったので、なんだか惜しいなと思う。
さすがにクソガキがクソガキ過ぎて日本人としては結構引いたりするけど。酒とかマリファナとかセックスだとか、そういう話ばっかしてんのね。青春ってそういうものだけで構成されてるんだっけ。別にいいけど。

でもさ、映画みたいに基本映像を見せられるゲームって、これまでたくさんあったじゃん。いまさらこんなゲームに感動してくださいってのも、ちと難しいですよ。音楽の使い方も、映画がさんざんやってきたもので、知ってますし、その手法をゲームに持ち込むさいに何か工夫があるわけでもない。ありきたりな、ノスタルジーを、ゲームとして楽しめる、そういう安っぽいエモエモなゲームではあるよね。
パブリッシャーのAnnnapuruna的な話をすれば、『風ノ旅ビト』が発明したナラティブから退化しちゃってるんじゃね?とか思う。

このゲーム、Annapurna Interactive(アンナプルナ インタラクティブ)っていう有名なゲームパブリッシャーの新作となっている。パブリッシャーってのは流通とか宣伝とかを担うところ。デベロッパー(開発)とは違う。「集英社ゲームス」が『都市伝説解体センター』でやっていたようなお仕事がパブリッシャーのお仕事、という説明ができるようになって便利だ。ありがとう集英社。

アンナプルナはさ、猫になってSFっぽい街を走り回る『Stray』とかが最近だと有名なのかな。一応"インディーゲーム"のパブリッシャーとして位置づけられているけれど、もはやインディーとはみたいな昨今。尖ったセンスを感じたりする比較的小規模に作られたゲーム、をインディーゲームと呼んだりするのだけれど、そうなると「コジマプロダクション」の『デスストランディング』シリーズもインディーゲームに該当しちゃう。あんなハリウッド俳優が出演しまくるゲームがインディーゲームかよ、みたいな、ややこしさが、あるわね。

ま、そういう細かいことはそこまで気にしなくてもいい。莫大な開発費や宣伝費をかけた超大作を、AAA(トリプルエー)タイトルと称したりもするけれど、最近のゲームはそういうものほど評価が芳しくない。アホみたいに金かけて、大した体験を提供できていない。となると、もはや(おもろい)ゲームといえばインディーゲーム、そういう時代になりつつある。多くのゲーマーが狂ったようにスレスパ2(『Slay the Spire 2』)という変なゲームをやっていたりするんだよ。知ってた?
アンナプルナはそういう時代を切り開いてきたパブリッシャーの一つといっていい。芸術的で、一風変わった挑戦的なゲームをいくつも世に送り出してきた。でなんか知らんが、2024年にほとんどの社員が退職して、そいつらが別の会社を立ち上げたりっていう騒動があったが、まとりあえず、社は存続していて、なんだかんだ発売された今作。

アンナプルナ インタラクティブってのは、親会社がアンナプルナ ピクチャーズっていう映画配給会社だったりしていて、それを考えると、このゲームがアメリカの映画や映画音楽などの文化に圧倒的に傾倒しているのもそこまで不自然でもないのかも、とかは思う。意地悪な言い方をすると、マジでそういう文化を楽観的に信じているからこそ、作れるゲームだなと思う。そういうゲームもあっていいと思うよ。
でも、アンナプルナが、こんな単純なゲームを世に送り出し、こんな単純に絶賛されているのは、ちょっと悲しい気持ちになるね。

一方で、日本でこういうカルチャー全開のエモエモゲームを作るなら、どんなことをすればいいのかな、なんて考えたりする。が、けっこうむずかしいんだと思う。日本においては、ゲームと密接に関わりがあったものは、映画ではなくマンガなどの出版だったから、まったく同じようなアプローチはできなさそう、だわねぇ。音楽的にも、JASRAC的に?やべーんじゃね?知らんけど。

追伸
このゲームは冒頭も冒頭で唐突にやってくるキスシーンがあり、そこでもミニゲームができるのだが、その内容がかなり衝撃的。キス中の接続された二人の口内を真横からとらえた画面で、舌と舌をコントローラーの左右のスティックで操作できるパートが、かなり短い時間だけれど、ある。スクショしたが、結構グロい絵面なので掲載は控える。ぜひプレイして確かめてほしい。キスオタクとして、今までにないキス描写にとても感動した。あのキス相撲ゲームだけを、もっと操作していたい。まじで。